2012年5月13日日曜日

「サバイバーズ・ギルト」を理解するために - Ameba News [アメーバニュース]


「サバイバーズ・ギルト」を理解するために

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震災生存者は命が助かったことによる苦しみを抱えることも多い

■震災を生き延びた方の苦しみ「サバイバーズ・ギルト」

 2011年3月11日の東日本大震災から3週間弱、地震、津波の被害による死者・行方不明者はあわせて2万7000人を超えると報道されています。自分の命は助かったものの親しい方の安否が分からず、不安と心配で夜も眠れない毎日をお過ごしの方がたくさんおられることと思います。

 震災では、一瞬の差が生死を分けると言われます。今回の震災でも津波の第一波で助かった方のなかにも、その後に家に戻り、第二波で命を落とされた方や、職務を優先させて殉職された方、子どもやお年寄りを先に避難させて犠牲となった方々がいると聞きます。

 そんな中で助かった震災生存者の方のなかには、自身の幸運に感謝しながらも、次のような罪悪感に苦しめられてしまう方もいらっしゃいます。


アフリカ系アメリカ人で摂食障害

「私があの人の命を犠牲にしてしまった……」
「どうして私だけが助かってしまったんだろう?」
「私さえいなければ、あの人を死なせることはなかったのに」
「役に立たない私が援助をしてもらうなんて、申し訳ない」

 このように、震災や事故などの被害に遭い、命が助かった幸運によって罪悪感にさいなまれることを「サバイバーズ・ギルト」と言います。1995年の阪神大震災や2005年のJR福知山線脱線事故に遭遇した生存者のなかにも、このような罪悪感を抱える方が見られ、注目されるようになった問題です。

■気の利いた言葉が逆効果のことも…注意すべき気遣いの言葉
 
 「サバイバーズ・ギルト」のように強い苦しみを抱えた方の話を聞くとき、私たちはつい「気の利いた言葉」を探してしまいます。ところが、逆にその気遣いによって相手の心を傷つけてしまうことがあります。

 以下の11の言葉は、兵庫県こころのケアセンターが発行する『サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版』内の、家族や親しい友人を亡くした被災者を支えるときに「言ってはいけないこと」から一部を引用させていただきました。このように相手を思いやる気持ちから生まれた言葉も、当事者を傷つけてしまう恐れがあることを理解しましょう。

□家族や親しい人を亡くした被災者にかけるべきではない言葉


浜の子不安で日

・きっと、これが最善だったのです
・彼は楽になったんですよ
・これが彼女の寿命だったのでしょう
・少なくとも、彼には苦しむ時間もなかったでしょう
・がんばってこれを乗り越えないといけませんよ
・あなたには、これに対処する力があります
・できるだけのことはやったのです
・あなたが生きていてよかった
・他には誰も死ななくてよかった
・もっとひどいことだって、起こったかもしれませんよ。あなたにはまだ、きょうだいもお母さんもいます
・耐えられないようなことは、起こらないものです

 「サバイバーズ・ギルト」を例にとっても、浮かぶ思いは一人ひとり異なり、その思いは各人の経験や感じ方の中でしか生まれないものです。既存の言葉で解釈されようとしたり、文献から引用したような言葉をかけられたりすると、逆に深く傷ついて、心を閉ざしてしまうこともあります。そのため、震災生存者の方とお話をする際には、細心の心配りが必要になるのです。

 では、どんなことに心を配って会話をしたらいいのでしょう?

■「かける言葉」ではなく「聴く」ことに集中する

 被害者の苦しみに寄り添うときには、「かける言葉」ではなく、「聴く」ことに集中した方がいいと私は考えます。相手の話を熱心に聞くことを「傾聴」と言います。


recovvryライフサポート/昏睡状態の患者

 傾聴の「聴」は「耳へん」に「十四の心」と書きます。そのことから傾聴は、「"十四の心"ほどのたくさんの心遣いで、相手の話に耳を傾けること」などと表現されます。現代のカウンセリングの基礎を築いた臨床心理学者ロジャーズの説から、傾聴は次の3つの基本姿勢によって成立すると考えられています。

1. 自己一致 (ありのままに純粋であること)
2. 無条件の肯定的配慮 (相手を無条件に肯定して受容すること)
3. 共感的理解 (その人の気持ちになって理解しようとすること)

 被害生存者の苦しみなど、同じ経験に遭ったこともない人には想像もできないほど、深いものです。しかし、聴く側が「元気づけてあげなければ」「救ってあげなければ」と身構えず、「その人の深い苦しみは想像もできない。だからこそ教えてほしい」という純粋な気持ちで聴こうとし、批評的にならずに全面的に受け止め、共感的な姿勢で話を聴いていると、相手の方は「話をしたい」という気持ちになってくるはずです。

■心への支援は「情報」ではなく「傾聴」


 「しっかり受け止めてもらえる」と感じ、心の中にある葛藤や混乱を話しきったときに、人は大きく癒されるのだと思います。産業カウンセラーである私は、「技法に頼ってはいけない。一にも二にも傾聴だ」と叩き込まれましたが、その私ですら「聴く」だけでは物足りないように感じ、ついつい「かける言葉」の方に意識を向けてしまいます。しかし、そうして傾聴の基本姿勢から離れてしまうと、相手の心は確実に離れてしまうものです。

 健康管理や生活再建などの具体的支援を求める場合には、情報やアドバイスなどの「かける言葉」が必要です。しかし、「心」を支援する場合には、言葉より先に、相手に真剣に向き合い傾聴するという「姿勢」が大切なのだと思います。 ぜひ、震災に遭われた方の心に寄り添いたい、少しでも相手に楽になってほしいと願う場合には、この「傾聴」を意識されることをお勧めしたいと思います。

【ストレス:大美賀 直子】

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